2 Jun, 2005「ボーベーの消防士」
■いきなりピンチ!

フランスに着いてから初めて一人で行動する。
ボーベーに関して僕が持っている情報は、
ホテルのサイトの(信頼出来ない)地図のプリントアウトしかない。
だいたいこの地図、線路も駅の場所も出ていない。
僕が降り立ったこのボーベーステーションは、この地図の一体どこだ?

ホテルサイトには、
「CNSF(フランスの国鉄の略称)の駅から8分」と書いてあった。
えっと、それってボーベーには駅がひとつしか無いってことだよね?
で、歩いて8分?車で8分?

まぁ、駅前からタクシーに乗ればいいか。
いくらなんでもタクシーの運ちゃんなら、ホテルも知ってるだろうし...。
が、
「TAXI」の看板の前には、一台のタクシーも止まっていなかった(涙)

仕方なく、街の中心っぽい方向に歩き始めると、
(街自体はすごく奇麗な街。時間が時間なので、人はほとんど居ないけど)
すぐに街の地図の大きな看板があった。
プリントアウトと見比べてみる。
だいたい形は同じなんだけど、どうもプリントアウトには無い道がある。
しかも街の真ん中を通っている大きな通りっぽい...。
で、その道をまっすぐに行くとホテルに着く道のようなので、
とりあえず(プリントアウトの地図には無い)その道を目指してみる。

街中の店は(時間が時間だし)ほとんど閉まっているが、
所々バーが開いていてそこだけ人が集まっている。
毎日仕事が終わると、こんな感じで集まっているのかな?という雰囲気。
日本人が珍しいのか、リュックを背負った僕を見ている(気がする)。

若干改造したSUZUKIの古いGSX-Rが角から出て来たと思ったら、
回転を上げ爆音を立てつつ(でも、日本の改造マフラー程煩くは無い)、
少しだけウィリーをして去っていった。
この静かな街で見ると、すごく悪い人に見える....(笑)

きっとこの道かな?と思われる道をホテルの方向に歩き始めると、
徐々に道が狭くなってくる。
どの道が正しいか解らないので(なんせ地図に無い道)、
方向だけはホテルの方に進むようにジグザグに歩いて行くと、
どうやらプリントアウトの地図にも載っている道に出た....気がする。

こっちでは住所を道の名前で示し、
通りの角の家の壁や看板には、必ずその通りの名前があり、
それさえ追えれば迷わないことは、よく解った.....が、
地図に載っている名前と、実際のその場所の通りの名前が一致しない。
でも、この道だよなぁ....という気弱な確信はある。

街の中心から少し外れたこの辺りには人っ子ひとり居なくて、
誰かに聞こうにもどうにもならない。民家のドアをノックする勇気も無い。
バーの雰囲気に近寄れず道を聞かなかったことを、ちょっと後悔し始めた。
車はたまに走って来るが、タクシーは一台も見かけなかった。

とにかく歩く。郊外の住宅地....という感じ。なだらかな上り坂の広い道。
しかし、駅を出てから30分程になるのに、一向にホテルは見えない。
しかも、地図に出ている道の名前が中々出てこない。
「この道じゃ無い?」と、結構焦ってきた。
ホテルからは、
「10時に玄関が閉まるので、この番号で勝手に部屋に入れる...」
と、予約確定のFAXに番号が書いてあったけど、
いやいや、初めての国で初めて泊るホテルだし、
明日の朝は早く空港に行くのでタクシーもお願いしておきたい。
なんとしても10時前に着いてホテルの人に会いたい。

少し日が落ちてきた。

その道を行くか戻るか迷い始めた頃、脇の方から若い男の人が歩いて来た。
こんな場所をこんな時間にひとりで歩いている人に、
果たして声を掛けて大丈夫かどうかちょっと迷ったけど、
他に頼るものも無いので、「Bonjour !」と。

で、この人、運良くすごく親切な人だったけど、英語が一言も通じない。
もちろん僕がフランス語で解るのは、ボンジュールとメルシーだけ。
名詞くらいは少しは英語が通じるだろうと思ってたので、ちょっと焦った。
「City Hotel」と言っても通じなかった。
発音がおかしいのかな?と思って住所入りの地図を見せると、
どうもCityもHotelも発音が英語と結構違うらしく...。

彼はCityHotelを知らなかった。
で、最初何か言って指を指していたんだけど、まったく理解不能。
身振り手振りで解らないことを適当な英語で話していたら、
彼は「行こう」というような感じで歩き始めた。
途中でジョギングしていた人や、民家の庭先で食事をしていた人、
交差点で止まった車のドライバーに聞いてくれた。
どうやら道は合ってたらしい。
聞く人、聞く人、みんなこの道をまっすぐと(言ってたと思う)。
なので、彼には「もう大丈夫だよ」...というつもりで、
メルシーを連発するんだけど、
彼はどんどんそっちに向かって歩いて行く。

途中で彼はいろいろ話しかけてくれるんだけど、
ホントに単語がまったく解らない。
どこから来たのか?と言うのはわかったので、
「ジャポネ」と言うと、ちょっと驚いていた。
日本人はこの街には来ないんだろうなあ。
どうやら彼は消防士らしい。
自分の帽子を指して「ファイヤーマン」と言うので見たら、
帽子にも英語でそう書かれていた。
あぁ、人を助ける人だ.....と思って、かなり不安が払拭。
ファイヤーマンに憧れている人....だったかもしれないが。

結局、僕と出会ってから20分以上歩いたと思う。
何かネオンサインが木陰から見えてくる。
マクドナルドだ。
街中の食料品店は既に閉店。と言ってバーに入る訳にも行かず、
「今日は夕食抜きだなぁ...」と思っていたので、
このマックはホントに嬉しかった。
そしてマックまで来ると、横にはステーキハウスがあり、
その2つと同じ敷地内に、「City Hotel」を発見!

ちょうど22時。
彼に感謝の気持ちをなんとか伝えたいけど、なんせ言葉が全然解らない。
とにかくメルシーとサンキューを繰り返して、握手と抱擁で別れた。
本当にありがとう。

彼は来た道をトコトコ歩いて戻って行った。
2 Jun, 2005「ボーベーの消防士」End.

ボーベーの駅の前の道。タクシーも居なければ、人も居ない...。

必見!ホテルサイトにあったボーベーの地図。プリントアウトするとき、縮尺を入れなかったことが失敗の始まり。

街中。確かに9時過ぎの田舎なんので、人が歩いていなくても不思議は無いけど、この明るさのおかげで異常な違和感。

どんなに田舎に行っても、最新の日本製バイクは必ず見かける。

写真の真ん中の道を登って来た。ここで既に駅から20分くらい歩いている。誰も居ない。

普段はほとんど行かないマクドナルドの看板が最初に見えたとき、これで夕食にありつける...という喜びと安堵感が...。

マクドナルドの隣にはステーキハウス。

マック、ステーキハウスが見えた次に、やっと「City Hotel」を発見。ちょっとモーテルみたいだけど。