4 Jun, 2005「トリノ行きの列車で」
■イタリア女性と喋りっぱなし!

窓口のお姉さんにトリノ行きのチケットを買って時間と番線を聞くと、
両方とも上のホームの掲示板で見ないと解らないと言う...。
不親切だなぁ〜と思ったけど、
実はホームは時間直前にならないと何番線になるか決まらないし、
勿論時刻表はあるけど定刻通りとは限らない。
そういう意味で、正確を期して言わなかったんだろう...と思うことにした。

ホームに行くとちょうどトリノ行きが出た後だった。
こちらの案内板は、列車の出発直後1〜2分間は表示がそのままらしくて、
列車が遅れてまだホームに停まってるのかと思ったら、列車の姿は無く...。
トリノ行きが出た反対側のホームに止まっていた、別の列車の車掌さんに、
「次のトリノ行きは?」とチケットを見せて聞くと、
次の列車の時間をチケットに書いてくれた。
出発も、このホームのどちらかのビナーリオ(番線)になるだろうと。
Grazie !

さて、次の列車まで1時間程ある。
ちょうど昼時になっていたので、どこかに入って昼食を取ることにした。
構内にはカフェしか無く、トラットリアか何かを探しに駅前に出る。
こういう時は改札が無いから気楽。

ちょっとミラノ駅前でどうかと思ったが、選べる程数が無かったので、
「New York」という名前の店に入ってみる。
外に居たウェイトレスに「スパゲッティが食べたいんだけど」と聞くと、
10ユーロのバイキングしか無いとのこと。
(まっ、ニューヨークだしなぁ....)
ちょっと高いかなぁ〜とは思ったけど、探す程時間は無いしな...と、
言われるままに中に入り、料理を適当に(取りすぎないように)取り、
オレンジジュースをお願いして、席に着く。
支払いは後で良いらしい。

あぁ、水も頼もうと思うが、水の頼み方がまだ解らない。
「オレンジジュースじゃ無くて水だったの?」と聞かれたりするが、
いろいろ言ってるうちに「追加で水」が通じる。
「日本から来たんだけど、イタリア語が全然解らん(笑)」とか言いながら、
ウェイトレスと少しだけコミュニケーション。

食事は美味しい。何の料理か解らないものもあったが...。
外の席だけど、テントの下なので日差しはあたらず、非常に気持ちよい。
駅前でそれなりに車やバスが通るけど、なんとなくのんびりした雰囲気。

食べ終わる頃、僕のちょうど真ん前の路上に黒塗りのランチアが止まり、
運転していた制服警官が後ろのドアを開け、刑事らしき人が降りて来る。
店の横のビルに、他の車の警官1人と入って行く。
ビルの入り口には2人程警官が残る。
なにやら緊迫した雰囲気。

で、車を運転してきた制服警官。
運転以外の命令は無いのか、僕が食べている店の方に入って行って、
何やら注文している...。
そんなことでいいのか?

これから何か起きるのか気になり、
その特等席で見ていたかった気持ちが半分、
何かに巻き込まれたら嫌だなと思う気持ちが半分。
結局、電車の時間が近づいたので店を出ることで、気持ちが決まる。
そして微妙にホっとする僕...。

先ほどのウェイトレスにお金とチップを払い、店を出る。

先ほどのホームには、既にトリノ行きの列車が停まっていた。
乗り込んで座ると、ほどなく席のところに物乞いの女の子が来る。
何か紙に書いてあるけど全然読めない、
何もあげないよ...と、「no, no!」と、手で追い払う仕草をするが、
金を出さないと、つばを口に溜めて今にも吐きかけるようなフリをする。
「(げっ、マジかよ...)」という、相当嫌な感じ。
すごく簡単でかなり強烈な恐喝方法があったもんだ。
そんなやり方なモンで、絶対金をやるもんか!...という気分になる。
ずっと「no,no!」強く言ってたら、
最後は本当につばを吐きかけるマネをし、目の前を去った。
(捨てセリフの代わりか?)

その子は、僕のひとつ向こう側のシートに座っていた女性にもすがる。
今度は膝を着いて何かお願いするような感じだ。
なんだよこの差は。
その女性は、何か「こんなことしちゃダメよ」という感じで話しつつ、
自分の持っていたサンドイッチをあげようとするが、その子は受け付けない。
結局その女性は小銭を渡すと、急にその子の態度が変わり、
受け取った小銭をいきなり彼女に投げつけるフリをして、去る。
見ているだけでもかなり嫌な気分。
想像出来ないくらいの貧困な暮らしなんだろうけど、なんだかなぁ....。

出発間際に結構人が乗り込んで来て、4人組に席を譲る為に、
小銭を投げつけられそうになった女性が立ち上がる。
こちらに来たので、前のシートを指し「Please」と。
2時間、トリノまで暇つぶしに日記を書こうと思ってたけど、
その子の話題がきっかけで話しかけたら英語が少し通じるので、
開きかけたiBookを閉じて、しばらく旅の友になった。

お互い英語が少しだけ解るので(彼女の方が上だと思うけど)、
例の指差しイタリア語の本も交えながら結構コミュニケーションが取れる。
当然単純なことを伝えるのにも時間は掛かるが、なんとかなるもんだ。

彼女は看護婦さんで(名前を聞いたけど忘れた...)、
イタリアの西にあるサルデーニャ島という島の出身ということだ。
今日はトリノに少し用事があるだけで、2時間程でミラノに帰るとのこと。

お決まりと言えばお決まりの質問。滞在場所を訪ねてくる。
トリノの後はヴェネツィアに行こうと思ってる...と伝える。
「ローマは?」
「ローマは行かない」
「フィレンツェは?」
「フィレンツェは興味あるんだけど、日程的に難しいかなぁ...」
「フィレンツェは綺麗なところよ。本当に素敵な街」
「そうなの?ヴェネツィアとどっちが素敵だと思う?」
「私は断然フィレンツェ!」
フィレンツェは、最初は予定に入れてたんだけど、
どう考えても日程的には厳しく、余裕があれば...くらいの気持ちだった。
今日からトリノに2日くらい滞在して、レンタルバイクか何かで、
ちょっと郊外を走ってみようと思ってたんだけど、
この話でかなり気持ちが揺らぎ始めて来た。

「行きたいと言えば、明日はムジェロでレースなんだよね。」と、
わざとバイクとかMOTO GPとか言わずに振ってみる。
すると、もう、ホントにこっちの期待100%の答え、
「あぁ、MOTO GPね。私はヴァレンティノ・ロッシの大ファンなの」
やっぱりイタリアンだ。間違い無い(笑)
で、カワサキのバイクが好きなんだけど、背が低くて乗れない...とか。
いやいや、日本ではあなたより相当背の低い娘が頑張ってます....(笑)

車窓から見えた教会の建物が綺麗だ....と言った時、
「あなたはカトリック?プロテスタント?」と聞かれたときは困った。
イタリア語で仏教は「Buddismo(ブッディーズモ)」と言うらしいが、
日本で言う「仏」は、微妙に「仏陀」とニュアンスが違う気もするし、
(「仏」は「仏陀」の最初の一文字から来てるらしいけど...)
そもそも僕は仏教徒でも無いし、大半の日本人も信仰心が薄い。
七五三は神社だし、結婚式は教会だし、お葬式はお寺なんですよ...なんて、
そういうバックボーンを説明できるほど、この指差し本は優秀では無い...。
「Non professo alcuna religione.(私は特に宗教は持ってません)」と
本にそのまま書かれている文章を見せるのが精一杯だった。
いろいろ言ってみたけど、伝わってないだろうなぁ....。
こういうときが、やっぱりちゃんと言葉を覚えたいと思う一瞬。

2時間退屈な列車の旅になると思っていたけど、かなり楽しい時間になった。
なんせ語学の出来ない僕が、現地の人とコミュニケーションが取れている。
「トリノは駅が2つあるけど、どちらで降りるの?」
と聞かれたが、ガイドブックにはトリノが出ていなく、
駅についてから地図を買おうと思っていたくらいで、
どこで降りて良いかもわからなかった。
(切符は終点の駅名が書いてあったけど、後で気づいた)
ということで、彼女が降りるトリノの最初の駅「Porta Susa」で一緒に下車。
駅前で「 Glazie mille ! Have a good day !」とお礼を言って、
彼女とは逆の方に歩き始めた。
いや、特に逆方向に進む理由は無かったんだけど、なんとなく...。

さて、ここは一体どこだ?
4 Jun, 2005「トリノ行きの列車で」End.

トリノまで乗車券。

「New York」のバイキングで皿に盛った料理。僕は、これとパンでお腹いっぱいになります。

トリノ行きの列車。牽引する電気機関車のペイントは.....やっぱり落書きだよねぇ?

名前聞いたけど、すぐに忘れた...。サルデーニャ島出身のイタリアン美女(!?)
手にしているのは「指差しイタリア語」の本。

トリノ「ポルタ・スッサ」駅のホーム。

「ポルタ・スッサ」駅全景。ロータリー周辺は工事中で更地になってたり...。凄く殺風景。微妙に田舎くさい...。